永遠のヒーローがトランペットに加え歌声を披露した大人気盤。ため息のように甘く切ない「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」の決定的名唱を収録。 (C)RS

チェット・ベイカーの代表作として多くの人が真っ先にあげるのが本作。トランペッターだったチェットが歌うようになったのは50年代はじめのこと。そして歌手としての名声を確立したのが本作だった。
曲はおなじみのスタンダードばかり。しかしチェットが歌うと、そこに独特の世界が広がり、聴く者はついついその世界に引き込まれてしまう。そういう意味では、チェットの歌と演奏には麻薬的な魅力が潜んでいる。ジャズ・ヴォーカルにありがちな大胆なフェイクは行なわず、メロディをストレートに歌い上げるスタイルはいたってシンプル、それでいて味わい深い。まるで耳元で囁くようなソフトな感触の歌声はチェットの専売特許といっていい。いまでは笑い話だが、当時チェットの歌を聴いた人は、女性が歌っていると誤解したりしたものだ。中性的と形容されるアンニュイな歌声、その歌声とリリカルなトランペットのハーモニーが絶妙だ。チェット・ベイカーを聴くなら、なにはさておき本作から。(市川正二)

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ディスク:1
1. My Funny Valentine
2. That Old Feeling
3. Like Someone in Love
4. My Buddy
5. It’s Always You
6. Someone to Watch over Me
7. But Not for Me
8. Look for the Silver Lining
9. I Get Along Without You Very Well
10. I Fall in Love Too Easily
11. Thrill Is Gone
12. There Will Never Be Another You
13. They All Laughed
14. Come Rain or Come Shine
15. There’s a Lull in My Life
16. While My Lady Sleeps
17. Forgetful
18. Little Girl Blue
19. Embraceable You
20. Night We Called It a Day